「マイマイ新子」の原作者サイン会と、「ふるさとの空気」

マイマイ新子」の映画上映を記念して
原作者である高樹のぶ子先生のサイン会が開かれるというので
新宿は紀伊国屋書店に行ってきました。

そしたらさ、お客さんの大半が


ロマンスグレーのおじさま


じゃあないですか。
およそ8割以上の方が高樹のぶ子先生本人目当てのようです(当たり前だけど)
マイマイ新子」の看板に釣られてノコノコとついて行った
にわかファンの俺涙目。


しかしながらその中に一人、
明らかに年代が低すぎるお客さんがいるのです。
母親に連れられた、小学校中〜高学年くらいの男の子。
当然ながら、先生の目に留まりました。


高樹女史「ボク、いくつですか?」
男の子「10歳です」
高樹女史「おー。この子はいい子に育ちますよ!」


「「「ハハハハハ」」」


アメリカンホームコメディのような「観客爆笑」を
ロマンスグレーのおじさま方がこれでもかと入れてくれるため
30人にも満たない会が、異常に盛り上がっています。


高樹女史「お母さんが読んでるの?」
男の子「塾の、SAPIXにこの本が置いてあって、
    面白そうで、詳しく読んでみたいと思って
    お母さんに頼んで買ってもらいました」
高樹女史「あら、うれしいですねえ。……お友達にも薦めてね♪」


「「「ハハハハハ」」」


たいへんよく出来たお子さんです。
仕込みなんじゃないかと思っちゃいましたよ。
……ってゆーかそのSAPIXって塾


こないだ就活のセミナーで行ってきましたよ!


何というタイムリーなツーベース。
SAPIXさんは就活生向けに模擬面接セミナー、というのをやっていて
無料で模擬面接&フィードバックをしてくれるんですよ。
しかもその面接、塾の方だけでなく、
自分以外の参加者全員が採点する役になるので
すんごい緊張するの。
でも、とてもいい経験になりますよ。度胸つきます。
教鞭を執っているだけあって、的確なアドバイスをしてくれますし。


しかし「マイマイ新子」を生徒に薦めるとは、
SAPIXさん、分かってらっしゃる。

あれ、でも薦めてるのは本の方で、映画ではないのかな?
映画も薦めてるんだよね、たぶん。
というか


サイン会参加者にも映画を見てない方がけっこういた……


みんな! 映画も見てあげて!!
原作とはだいぶかけ離れちゃってるけど(ぉ


追記。
サイン会では(当然ながら)映画の話にもなって、
イマイチヒットしてないですよねー、なんて話している途中
おや、と思う一言がありました。


映画の話の途中で、突然先生がインドに行ってきた話しになりまして。

インドはすごくダスティー
カメラのレンズがジャリジャリになって
コンタクトをしようものなら傷だらけになってしまって
などなどいかにインドの空気が汚れているか、ひとしきり話した後で


「そこで思わず目を閉じて、ふるさとの空気を思い出して……」


と、感慨深げに語るのです。


ふるさとの、空気。


これはたぶん高樹先生が、本作を書く中で最も思いを込めた部分のひとつ。
そして、
映画においても、一番大事にされている部分。


徹底した現地取材、
画面の描写・描き込み、
方言・台詞回し
主題歌・BGM・効果音に至るまで


その現場の、その当時の、その人たちが直に感じたであろう空気を
ややもすると過剰なまでに伝えようとしてくれる。


内容や話の流れはだいぶアレンジされているけど
あの「空気」だけはたぶん、限りなく忠実なんだと思う。
総合的な「空気」が魅力。
「よく分からないけど惹かれる」「魅力を上手く説明できない」
と、映画を見た多くの人が言っているんだけど
その理由はこの「空気」のせいかもしれない。